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ジャズで用いられる発展的コード進行~転調・モーダルインターチェンジまで~

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ジャズは、複雑な和音構成や自由な即興演奏を特徴とする音楽ジャンルであり、その発展的なコード進行は音楽理論の中でも特に魅力的で奥深い分野の一つです。この記事では、ジャズにおける代表的なコード進行の基礎から応用例、さらにそれを活用した作曲のアイデアまで、詳細に解説していきます。

 


 

1. ジャズコード進行の基礎

ジャズにおけるコード進行の重要性

ジャズではコード進行が楽曲の骨組みとなり、即興演奏の土台となります。進行が示す和音構成の上で、メロディやソロパートが展開されます。そのため、ジャズにおけるコード進行は、他のジャンル以上に洗練され、複雑な要素が盛り込まれています。

 

特徴的なポイント:

  • 複雑なテンションコード(9th、11th、13thなど)の使用
  • モーダルインターチェンジや代理コードの頻繁な採用
  • スムーズな転調やクロマチックな進行

 


 

ジャズでよく使われる基本コード進行

1.1. II–V–I進行

  • 例: Dm7 → G7 → Cmaj7
    ジャズの基本とも言える進行で、スムーズな解決感が特徴です。
    解説: IIはサブドミナント、Vはドミナント、Iはトニックに属するコードで、各コードが調和的な流れを生みます。

 

1.2. I–VI–II–V進行

  • 例: Cmaj7 → A7 → Dm7 → G7
    スタンダード曲のイントロやサビで頻出する進行です。A7は一時的なモーダルインターチェンジによるもの。
    応用: I–VI–II–Vの最後にIに戻らず、さらに別のキーに転調するパターンもよく見られます。

 

1.3. ブルース進行

  • 例: C7 → F7 → C7 → G7 → F7 → C7
    ブルーススケールを基盤とした進行ですが、ジャズではテンションを加えた形(C9、F13など)で演奏されます。

 


 

2. 発展的なジャズコード進行

2.1. サブドミナントマイナーの活用

サブドミナント(IV)のマイナーコード化は、ジャズの進行に切なさや複雑さを加えます。

 

  • 例: Cmaj7 → Fm7 → G7 → Cmaj7
    解説: Fm7はCメジャースケールには属しませんが、短調の色彩を一瞬持ち込み、独特の感情的効果を与えます。

 


 

2.2. トライトーン代理コード

トライトーン代理コードは、V7コードの代わりに使われる代理コードです。これにより、クロマチックな動きを加えることができます。

 

  • 基本: Dm7 → G7 → Cmaj7
  • 代理: Dm7 → Db7 → Cmaj7
    解説: G7の3度(B)と7度(F)は、Db7の3度(F)と7度(B♭)とトライトーンの関係にあるため、自然に置き換えられます。

 


 

2.3. ディミニッシュコードを用いた接続

ディミニッシュコードは、クロマチックな動きを作り出すための重要なツールです。

 

  • 例: Cmaj7 → C#dim → Dm7 → G7 → Cmaj7
    効果: C#dimは、Cmaj7とDm7をスムーズに接続する役割を果たし、進行に緊張感を加えます。

 


 

2.4. 循環進行の拡張

ジャズの循環コード進行では、シンプルな進行を複雑化するためにテンションや代理コードが多用されます。

 

  • 原型: C → Am → Dm → G
  • 拡張: Cmaj7 → E7 → A7 → D7 → G7
    効果: 各コードにテンションやセブンスを追加することで、進行がよりジャズらしい響きになります。

 


 

3. ジャズの転調技法とモーダルインターチェンジ

3.1. 突然の転調

ジャズでは、あるコード進行の途中で予告なしに転調することがあります。これにより即興性が強調されます。

 

  • 例: Cmaj7 → Fmaj7 → A7 → Dm7 → G7
    解説: A7が一時的なキー(Dマイナー)を暗示します。

 


 

3.2. モーダルインターチェンジ

モーダルインターチェンジは、メジャーキーの中にマイナーキーのコードを取り入れる技法です。

 

  • 例: Cmaj7 → Abmaj7 → G7 → Cmaj7
    解説: Abmaj7はCメジャーには属しませんが、並行調のCmキーから借用されています。

 


 

4. ジャズスタンダード曲での実例

ジャズスタンダード曲は、ジャズの伝統と演奏技術を学ぶ上で重要な教材です。これらの楽曲には、典型的なコード進行だけでなく、ユニークで発展的な進行が多く含まれています。この章では、代表的なスタンダード曲のコード進行を詳細に分析し、それぞれの進行の特徴や演奏への応用方法を解説します。

 


 

4.1. 「Autumn Leaves」

コード進行

  • キーがGマイナーの場合:
    Gm7 → C7 → Fmaj7 → Bbmaj7 → Em7♭5 → A7 → D7 → Gm7

 

理論的解説

  • II–V–I進行の連続:
    この曲の特徴は、マイナーキーとメジャーキーを行き来しながらII–V–I進行が繰り返される点です。

    • Gm7 → C7 → Fmaj7(FメジャーのII–V–I)
    • Em7♭5 → A7 → Dm7(GマイナーのII–V–I)

 

  • 転調:
    曲の途中で自然にキーが切り替わり、メジャーとマイナーの間を行き来する構造が、楽曲に動的な印象を与えます。

 

応用アイデア

  • ソロ演奏時には、各II–V–I進行のスケール(例: ドリアンスケールやリディアンスケール)を意識することで、メロディの展開に変化をつけられます。
  • コード進行を分解し、他の楽曲に取り入れることでオリジナル曲に応用可能です。

 


 

4.2. 「All The Things You Are」

コード進行

  • キーがFマイナーの場合:
    Fm7 → Bb7 → Ebmaj7 → Abmaj7 → Dbmaj7 → G7 → Cmaj7

 

理論的解説

  • 転調の連続:
    この曲は、部分的に異なるキーで構成されており、頻繁な転調が魅力の一つです。キーの移り変わりが滑らかで、各セクションが自然に接続されます。

    • Fマイナー → Bb7(サブドミナントマイナーの代理)
    • G7(Cメジャーのドミナント)への接続が特徴。

 

  • クロマチックな動き:
    G7 → Cmaj7 のように、半音階で進行する部分が、コード間の緊張感と解放感を強調します。

 

応用アイデア

  • この曲の転調パターンを他の楽曲に取り入れることで、洗練されたアレンジが可能になります。
  • ソロ演奏では、各セクションごとに異なるスケールを切り替えることで即興演奏に多様性を持たせられます。

 


 

4.3. 「Take The A Train」

コード進行

  • キーがCメジャーの場合:
    Cmaj7 → D7 → G7 → E7 → A7 → Dm7 → G7

 

理論的解説

  • ドミナントモーション:
    この曲は、ドミナントコード(7thコード)を中心に据えた進行が特徴です。D7 → G7 → E7 のような連続的な解決感を持つ進行が楽曲の骨組みとなります。

 

  • サブドミナントの利用:
    Dm7やG7などのコードが、主調(Cメジャー)のサブドミナント的な役割を果たしながら、曲に変化を加えています。

 

応用アイデア

  • ドミナントコードにテンション(9th、13thなど)を加えることで、よりジャズらしい響きを作り出せます。
  • 楽曲のエッセンスを取り入れ、独自のイントロやエンディングを作成可能です。

 


 

4.4. 「Blue Bossa」

コード進行

  • キーがCマイナーの場合:
    Cm7 → Fm7 → D7 → G7 → Cm7 → Abmaj7 → Db7 → Gbmaj7

 

理論的解説

  • ラテンジャズとモーダル要素:
    「Blue Bossa」は、ラテンリズムとジャズハーモニーの融合が特徴です。Cm7 → Fm7 の部分は、モーダルな響きを持つメロディに適しています。

 

  • ドミナント解決の変化:
    D7 → G7 は通常のドミナント解決を変化させており、クロマチックな動きを意識したコード進行になっています。

 

応用アイデア

  • この進行を元に、異なるリズムパターン(例えばボサノバ、サンバ)を試すことで新しいアレンジが生まれます。
  • ソロではモーダルスケール(ドリアンスケール、ハーモニックマイナーなど)を活用することで、より豊かな即興が可能です。

 


 

4.5. 「Giant Steps」

コード進行

  • キーがBメジャーの場合:
    Bmaj7 → D7 → Gmaj7 → Bb7 → Ebmaj7 → F#7 → Bmaj7

 

理論的解説

  • コルトレーンチェンジ:
    Giant Stepsは、ジャズの進行の中でも非常に挑戦的な「コルトレーンチェンジ」を特徴とします。これにより、1曲の中で複数のキーが行き来します。

 

  • 高速なテンポ:
    高速なテンポと複雑なコード進行の組み合わせにより、演奏者には高度な技術が求められます。

 

応用アイデア

  • 「Giant Steps」の進行を他の楽曲に適用することで、独特なモダンジャズ風アレンジを作ることができます。
  • ソロ演奏では、各コードごとにアルペジオを取り入れることで、高速な進行にも対応可能です。

 


 

4.6. 「Misty」

コード進行

  • キーがE♭メジャーの場合:
    E♭maj7 → G7 → Cm7 → F7 → Bb7 → A♭7 → A7 → D♭maj7

 

理論的解説

  • バラードスタイル:
    「Misty」は、スローテンポで進行するコード構造が特徴的で、情感豊かな演奏が可能です。

 

  • クロマチックモーション:
    Bb7 → A♭7 → A7 のような半音階的な動きが、進行にドラマチックな要素を加えています。

 

応用アイデア

  • スローテンポの曲でコード進行にバリエーションを持たせる際の参考になります。
  • ソロ演奏では、テンポを自由に操作することで、リスナーに深い印象を与えることができます。

 


 

5. ジャズコード進行を活用した作曲のアイデア

ジャズコード進行を活用することで、単純な楽曲構造を越えた深みのある作曲が可能になります。ここでは、初心者でも取り組めるシンプルなアイデアから、上級者向けの複雑なアプローチまで、具体的な作曲の方法とその応用例を紹介します。

 


 

5.1. シンプルな進行をジャズ風に発展させる

ポップスやロックなどで使われるシンプルなコード進行を、ジャズの要素を取り入れて発展させます。

 

例: I–V–vi–IV進行

  • 原型: C → G → Am → F
  • ジャズ風の発展:
    • Cmaj7 → G13 → Am7 → Fmaj7(♯11)

 

アプローチのポイント

  • テンションの追加:
    各コードにテンション(9th, 11th, 13thなど)を加えることで、響きを豊かにします。

    • Cmaj7: メジャーコードに7thを追加。
    • G13: ドミナントコードに13thを追加してジャズらしい解決感を作る。

 

  • リハーモナイズ:
    一部のコードを代理コード(例: トライトーン代理)に置き換える。

    • G13 → Db7(トライトーン代理)

 

  • クロマチックアプローチ:
    各コードを接続する際に、半音階的な動きを取り入れます。

    • Am7 → Ab7 → G13 → Cmaj7

 


 

5.2. 特定のジャズ進行を元に新曲を作る

ジャズスタンダードでよく使われる進行を基に、オリジナル曲を作るアイデアです。

 

例: II–V–I進行の応用

  • 基本形: Dm7 → G7 → Cmaj7
  • 応用例:
    • Dm9 → G13 → Cmaj7(♯11)
    • Am7 → D7 → Gmaj7(転調した形)

 

ステップ

  • 進行を選ぶ: ジャズスタンダードのコード進行をベースに選択します(例: II–V–I進行)。

 

  • テンションと代理コードを追加: 各コードに独自のテンションや代理コードを加えます。
    • G7 → G13(♭9) など、よりリッチな響きを作成。

 

  • リズムを変化させる: スウィングリズムやラテン風のビートを組み合わせることで、個性的な仕上がりになります。

 


 

5.3. 異なるジャンルとの融合

ジャズコード進行を他のジャンル(ポップス、ロック、EDMなど)と組み合わせて、独自の楽曲を生み出すアプローチです。

 

アイデア例

  • ポップス × ジャズ:
    • ポップスの定番進行(例: I–V–vi–IV)にテンションや代理コードを追加。
    • サビ部分にII–V–I進行を挿入してジャズの要素を導入。

 

  • EDM × ジャズ:
    • ベースラインにジャズのウォーキングベースを用いながら、コード進行にトライトーン代理を適用。
    • コード進行例: Dm7 → Db7 → Cmaj7(II–トライトーン代理–I)

 

  • ロック × ジャズ:
    • ロック的な力強いリズムを保ちながら、テンションコード(例: G7(♭9))を加える。

 


 

5.4. モーダルインターチェンジを利用した作曲

モーダルインターチェンジを使うことで、意外性のある響きを作り出すことができます。

 

例: Cメジャーキーでのモーダルインターチェンジ

  • 原型: C → Am → F → G
  • 発展: Cmaj7 → Abmaj7 → Fm7 → G13

 

解説

  • Abmaj7: 並行調(Cマイナーキー)から借用されたコード。

 

  • Fm7: 同じくCマイナーキーから借用。メジャーキーの中に切なさを加える。

 

  • G13: ドミナントコードにテンションを追加。

 

実践例

  • バラード調の楽曲で、サビ部分にモーダルインターチェンジを導入し、感情的な展開を作る。

 


 

5.5. 循環進行を元にした即興的作曲

循環コード進行を基に、楽曲全体を構成する方法です。

例: C → Am → Dm → G(循環進行)

  • ジャズ風アレンジ:
    • Cmaj7 → A7 → Dm7 → G7

 

ステップ

  • 基本進行を選ぶ: シンプルな循環進行を選びます。

 

  • テンションコードの追加: A7 → A13、G7 → G7(♭9) など。

 

  • リズムとフレーズを変化: 循環進行に合わせてリズムセクションをジャズ風にアレンジします。

 


 

5.6. 転調を利用したドラマチックな展開

転調を取り入れることで、楽曲に動きやスリルを加えます。

 

例: Cメジャー → Aメジャー → Gマイナー → Cメジャー

  • 進行: Cmaj7 → E7 → Amaj7 → Bb7 → Gm7 → G7 → Cmaj7

 

解説

  • E7 → Amaj7: V7 → I進行を一時的にAメジャーキーで行う。

 

  • Bb7 → Gm7: サブドミナントの代理コードを使用して転調。

 

実践例

  • 曲のAメロで1つのキーを使い、サビで転調を行うことでダイナミクスを強調します。

 


 

5.7. リズムとの組み合わせ

リズムを活用してコード進行にさらなる深みを持たせます。

 

アイデア

  • スウィングリズム:
    • II–V–I進行にスウィングを組み合わせ、軽快な雰囲気を演出。

 

  • ポリリズム:
    • 4拍子の進行上で、リズムセクションに3連符や5拍子のパターンを導入。

 

  • ルバート:
    • スローテンポの進行で、自由なテンポ変化を加え情感を強調。

 


 

まとめ

ジャズにおける発展的なコード進行は、音楽理論と即興演奏の交差点にあります。これらの進行を理解し応用することで、より自由で表現力豊かな音楽を作ることができるでしょう。

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