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【ヌビログ】チェロ奏者の僕が3年ぶりにオタクに戻れた話

3×4×S

皆さんこんにちは、チェロ奏者・作編曲家のヌビアです。

ホームページがリニューアルしてからは初めてのブログ更新になります、お久しぶりです。

さてこの度、3×4×S(サシス)3作目となるゲーム音楽カバー映像『原神 テイワットメドレー』がお披露目となりました。

今回は「原神(Genshin Impact)」という世界的ヒットを記録しているオープンワールドゲームのテーマ曲をメドレー形式にしてカバーさせて頂いております。

 

まずは今回の映像に関わってくださったすべての関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

今回の作品に対するこだわりなどは別途取材をして頂きましたので、こちらの記事をご覧下さい。

ここからは私事になりますが、僕はこの原神というゲームが大好きでして、それこそここ数年、長いスパンでハマったアニメ・ゲームなどのコンテンツが全くなかった時にこの作品と運命的な出会いを果たしました。

 

最初のきっかけは自分の知り合いが原神にハマっていたことでした。

 

僕はここ数年、アニメ・ゲーム・ステージなどの音楽仕事にかかりきりで忙しい毎日を送っていました、その一方で自分がどんどん「オタク」から離れていくことも感じていました。

アニメもゲームも元々大好きですが、そこに「音楽を提供する」「仕事として関わる」という以上は適切な距離感と温度感を保ってコンテンツと向き合わなければならない、と僕は思っていたからです。そんな中、知り合いが楽しそうに原神をプレイしている姿を見て、その喜びを共感できない自分がいることに対してどこか寂しい気持ちを覚えました。

半ば吹っ切れた気持ちで「僕もやってみよう」と思ったことが始まりなのです。

とはいえいきなりハマったわけでもなく。インストールはしてみたものの、やはり物語に対して一度冷めた熱はなかなか戻ることはなくて、「容量も食ってしまうし」と思いすぐに諦めてしまいました。

しかしそれでも最初に覚えた寂しさが抜けずに、再度インストールして「今度は絶対にハマってやる」「覚悟を持ってこの作品に向き合ってやる」と思い(こんな心持でプレイを始める人はなかなかいないでしょうが笑)プレイする前に20000円課金して、不退転の決意で原神という冒険世界に足を踏み入れました。

 

するとどうでしょう、これまでどこか冷めた目線で物語を俯瞰するしかなかった僕の心を融かすには十分な、いや、有り余るほどの熱量とスケールで原神は僕の手を引っ張ってくれました。

まず心惹かれたのは壮大な音楽・環境音などに対するコンシューマゲーム並、いやそれ以上のこだわり。そしてソーシャルゲームとは思えないほどの重厚な世界観とそれを支えるビジュアル・UI、丁寧に作りこまれたPV。作品の隅々から原神という物語への愛情があふれている

僕の決意に対して、作品自体の熱量が不足していればこの現象は絶対に起こり得なかったでしょう。

 

原神は自分が忘れかけていたゲームへの没入感だったり、ワクワクさせる体験だったり、何時間も時を忘れて熱中してしまう感覚だったり、そんな感情を呼び起こさせてくれたのです。

そして、仕事において曲を作る上でその感覚を忘れる必要はないのだと、いつまでも子ども心を持って自分が創る作品に向き合うことは可能なのだと、原神は僕に教えてくれました。

 

そこへ、3×4×Sの相方であるしゃみおさんから「僕、原神の三味線奏者として参加したんだよね」との連絡。こんなに嬉しさと口惜しさが相半ばする感情は初めてでした(笑)。

そしてその瞬間に僕は決めて言いました。「次ユニットで作るカバー動画、原神にしないか」と。

 

なので今回この映像を作る上で、僕はファンの目線をしっかり持って、全力でこの作品への愛を込めることにしました。

それは今までの撮影で感じた自分の反省点に向き合い、原神という作品に向き合うことでもありました。

 

前述の通り、原神の発信するコンテンツは常に物語への愛情にあふれています。制作チームが本当にこの世界を愛しているからこそ、我々ファンも節々からそれを感じることができる。

それは音楽を聴いていても同じことを思います、ゲーム内の楽曲はエリアごとに統一感があり、各エリアテーマのアレンジが随所に盛り込まれつつも、メインテーマのテイストを残している。なので僕が考えたのは「自分が原神の音楽チームにいたならこうする」という1点でした。

チェロのメロディーが目立つメインテーマは「自分ならこう演奏したのに」と本家OSTを聞いた時に感じた気持ちに素直になって演奏。編曲については、聴いている人の頭にテイワット三国を周遊できるイメージが浮かぶように、かつ本家OSTが大編成のものが多いため出来るだけ少ない楽器数でそれを表現できるように収束。また、本編で特に印象に残ったシーンも、自分が感じた印象をそのままに表現(神里綾華の舞のシーンなど)。

 

また、原神の本家映像は常にダイナミックで、ストーリー性があり、見る者を惹きつける訴求力があります。僕らが出す映像でそこに対するリスペクトを示すためには、僕らなりの「原神」を訴えなければならないと思いました。

なのでアレンジを始めると同時に、僕の中で映像のイメージも並行で作っていました。

 

僕らはテイワットを巡る音楽隊、そうなると現状のゴール地点は稲妻、稲妻で誰かと出会いストーリーが完結、そうしたらそこにいるのは流離いの浪人というのはどうだろう、稲妻国の木の下でみんなで原神料理を食べるカットもあったらいいな、モンドのテーマにはピアノが合うからジェイコブに声を掛けてみよう、甘雨推しの僕としてはどこかに甘雨のテーマも入れたいな、音楽と刀で戦うっていう裏テーマがあったらカッコいいかな、テイワット3国に合うロケ地は……

 

―――あれ、僕はいつからこんなにオタクになれていたんだっけ。

 

「原神という作品で映像を作るなら、本家に負けないくらいの熱量を持っていないといけない」、そうやって気持ちが張り合っている自分は、オタクに戻れていたんだと気が付きました。

 

そうだ、自分はゲームやアニメでチェロが弾きたくて、そういう文化の音楽が作りたくてこの仕事を選んだんだ。仕事にする以上冷静な目線も大事だけれど、その熱意を忘れる必要なんてなかった。

 

そんな気持ちでこの映像を作りました。

ぜひ少しでも多くの人にこの映像を見てもらえたら。原神が好きな人には「この人は原神のことを分かってる」と思ってもらえるように、原神を知らない人にも「面白そう、プレイしてみたい」と思ってもらえるように。

 

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